私はベルゼブブ。ブタを模る豚の面、暴食を与えしもの。
私が趣味でやっている畑の様子を見に行くと今日は一人の青年が待っていました。
「ご無沙汰だね、ベルゼブブ。」
「おや、熊の面ではありませんか。私の畑の前で何をなさっているのです?」
彼は熊の面。熊のようにおっとりとした性格なので私はそう呼んでいます。
彼と仲のいいベルフェゴールが言うには「怒ると怖い」そうですが、彼が怒っている姿など私には想像がつきません。そもそも人見知りが激しいあのベルフェゴールと仲がいいということが驚きです。相当熊の面が心の優しい人の子なのでしょう。念のためにお伝えしておきますが彼の好物はハチミツではありません。
「特になにかをしていたわけではないよ。いや、何にもしないをしていたのかな、ふふ」
「あなたそれとんでもないところから怒られますよ。気をつけてくださいね。」
私が最も敵に回したくないところにサラッと触れてくるこの男・・・只者ではありません。
「それでは散歩か何かでしょうか?」
「うーんそんなところかな。時間を持て余しているんだ、君の作業を手伝ってもいいかい?」
「ええ勿論歓迎しますよ。ではそこの鎌をもってきていただけますか?」
「ああ、わかった。・・・なるほど鎌か」
熊の面は鎌をニギニギと触りながら微笑んでいます。
「どうしましたか?熊の面。」
「いや・・・なぜか懐かしい気持ちになってね。安心感、とも言うのかな。」
鎌を握って「安心する」と言うあなたが隣にいる私は、全くもって安心できません。
「このあたり一面の雑草を刈っていただきたいのです。」
「ここの草だね、分かった。じゃあ、アケディア・・・!」
「ちょちょちょ」
「うん?なんだいベルゼブブ。今から草を刈るからね。 アケ・・・!」
「ちょ!シッ!大きな声出さないでください!え?なに?何を言おうとしてるんですかあなたは?」
「鎌を使う時は掛け声が必要なんだよ。」
「それ誰が考えたんです?」
「僕」
めちゃくちゃかこの男。そもそも使うタイミングなんてあまりないはずなのに何故鎌限定?!
落ち着くのですベルゼブブ・・・この男、何を考えているのか分からない・・・今日のところは帰ってもらわなくては・・・!
「熊の面、ありがとうございます。よく考えたらこの草は刈ってはいけない草でした。」
「ええ、そうなのか?」
「そうです、超大事草です。刈ったら爆発します。」
「それは大変だね。」
「またお呼びしますので今日はおうちでゆっくりされては?ほら、豚の面も差し上げます。」
「ありがとう、そうするよ。何もしていないのにお土産ももらっちゃってなんだか悪いなあ。」
豚の面をつけてスキップで帰っていく熊の面・・・要注意人物かもしれません。
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