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第一話「獅の面とベルゼさん」

私はベルゼブブ。ブタを模る豚の面、暴食を与えしもの。

今日は趣味でやっている畑の様子を見に来ました。

え?悪魔らしくない?当然です。

私は豊穣の神。畑くらい自分で世話できずに何が豊穣の神ですか。

ルシファーには荒らされ、レヴィアタンとベルフェゴールにはおじいちゃんと弄られ、

マモンには金になるまでに時間がかかると指摘されましたがそんなの気にしません。

それにサタンはたまに手伝ってくれますし、

アスモデウスは出来た作物を美味いと食べてくれるのでやりがいがあります。

・・・おや?あそこにいるのは・・・?


「あれ、ベルゼブブじゃないか。」

「偶然ですね獅の面。あなたも畑ですか?」

この少年は獅の面。たてがみのような髪型であることと、クソださいTシャツにも猫だかライオンだかわからないキャラクターが描かれていることから私がそう呼んでいます。


「別に、僕は畑なんてするつもりはなかったんだけど。気付いたらここにいたんだよな」

「そうですか。何はともあれ豚の面を差し上げましょう」

「いやいらないけど」

彼らが何者なのかは知りませんが、私の目の前にやってきたということは「豚の面を取りに来たか」「畑を手伝いにきたか」の二択であることに間違いありません。

畑をするつもりはないということだったのでてっきり目当ては豚の面かと思ったのですが、どうにも違うようです。


「ふむ、ではなにを?」

「さあ、野菜たくさん食えってことかな。最近ちょうど兎我野にあってさ。あいつに肌の調子が良くないように見えるから野菜をちゃんと食べなさいって言われたんだよな。」

「おや、もしかしてこれですか?」

「小指はやめろベルゼブブ。そんなんじゃねえってたまたま会っただけだよ」


たまたま会っただけの友人に肌の調子を気にして声をかけるでしょうか。

私のこのハエの目にはそんな風には見えませんが・・・。

最近の若者たちは意外と鈍感でウブなのかもしれませんね。


「では野菜が出来ましたら私から獅の面に差し上げますね。」

「え、本当か?それは助かるよベルゼブブ。」

「ついでに豚の面を」

「いらないから」


私がこれほど気前よく差し上げようというのにこの断固として受け取らない姿勢・・・。

以前私が学んだ「モラエルモンハモロトキ」論法は間違っているのでしょうか・・・。

ううむ奥が深い、私もまだまだのようです。


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